日本代表の総括

W杯はまだ続きますが、日本代表が決勝トーナメント1回戦で敗退して帰国してきたことでもあり、素人なりに総括してみたいと思います。

全体として日本代表はよく戦ったと思います。特に岡田監督の現実を冷徹に見すえて選択した作戦は、素晴らしかったと思います。屈強なDFも、たよりになるFWもいない中、限られた持ち駒で強敵と対等に渡り合った手腕は評価されるべきだと思います。もちろんそれには前線の3人、とりわけ本田の活躍がポイントとなりました。

ただ悔やまれるのはデンマーク戦です。結果、勝ちはしましたが4-2-3-1の攻撃的な布陣が機能しませんでした。幸いそうした状況も考え、メンバーは同じにしていたので、簡単に阿部をアンカーにする布陣へ変更することで事なきを得ました。しかし「4人のゾーンにするとどうしても、うちの場合は幅を全部カバーできず、中盤とディフェンスラインの間でボールを受けられる」これがパラグアイ戦に影を落としたのではないかと考えます。

敗戦したことで日本代表の戦いは終ってしまったため、岡田監督は「執念が足りなかった」というだけで詳細を語らなかったので正直よく分かりません。しかし試合を見てみると、序盤は4-3-3のフォーメーションでの守りが機能して相手を寄せ付けなかったのですが、相手が慣れてきてDFを押し上げてつながれるようになると、次第にスペースをカバーできなくなり、ラインは引き気味になってきました。ここは勇気を出して日本も押し上げてガチンコで勝負すべきだった思います。しかし選手はほころびを修正するため下がって耐えることを選択したようでした。もちろんそれはそれで機能して、失点することはなかったのです。

前半21分ピンチの後逆襲して、松井のミドルがバーを叩いた瞬間、パラグアイの選手の中に動揺が芽生えたように見てとれました。そしてその直後パラグアイDFのパスミスからチャンスが訪れました。このタイミングでDFをもっと上げて押し込んだらどうだったでしょうか。相手はさらに混乱しDFが崩れたかもしれません、あるいは反対にカウンタを喰らって日本が失点したかもしれません。それが勝負のあやです。相手FWの高さと裏のスペースが気になったのか、結局DFラインは元通りに自陣深く引いてしまいました。そしてパラグアイ選手は落ち着きを取り戻すことになりました。そして後半。序盤パラグアイに攻められましたが、9分くらいから15分あたりまでの攻め合いがあってお互いチャンスが生まれました。このときもっと押し上げて攻める姿勢を見せていれば、もっと決定的なチャンスが生まれたかもしれません。

なんでもいいから押し上げろ、攻めろというのではありません。格闘技と同じで、相手が怯んだ隙に一気にたたみかける闘争本能が必要なのではないかと言うことです。それがオシム前監督のいう「殺し屋の本能」ということでしょう。帰国会見での「いいチーム」という平和なコメントとは裏腹に、日本代表に足りなかったのは隙を見せた相手を一気に叩きのめす「殺し屋の本能」だったのではないでしょうか。来年のコパアメリカではチャンスと見たらリスクを負ってたたみかけ、「悪魔のようなチーム」と恐れられる存在になってほしいものです。

というわけで今後の日本代表に望みたいのは、足元がしっかりしていてスピードもある大型のCBです。できれば若くて190センチ台の選手が欲しいところですが、U-21にもU-19にも見当たりません。ハーフナー・マイクをコンバートするとか(笑)それはさておき、CBがしっかりすれば4人のゾーンにしてもカバーできるようになり、アンカーを置かなくてもボランチとDFの間にパスを通されて侵入されにくくなります。そうすれば強い相手がきても、枚数をかけてバリエーションのある攻撃ができます。もうひとりはポストのできるFW。別に背は高くなくても屈強なDFの圧力に負けないパワーがあればいいのですが、やはりU-21にもU-19にも見当たりません。新監督はその宿題の答えを探さなければいけません。そういう意味でブッフバルト氏はいいかもしれません。

もっとも代表監督には選手の育成をしている時間などないので、各クラブの育成担当者がその任を負うことになります。技術委員会がどんな報告書をまとめるのか、いろいろな意味でいまから楽しみです。ジーコ元監督のときのような通りいっぺんのものでないことを期待します。

※「本田にパスの36%を集中せよ」では、DFラインの問題がフォーメーションではなく、岡田監督の戦術=ボールの出所を抑えろ、に問題があったことがよく分かります。