今日のNIKKEIプラス1、何でもランキングは「手土産にしたいクッキー」だった。その中で1位に紹介されていた商品は、確かにクッキーは美味しそうだが、何か足りない気がする。きれいにデザインされた缶の中に並べられたクッキーは、どうも詰め方がありきたりで「特別」な感じがしないのだ。それに比べると2位と3位はきっちりと並べられていて見た目が美しい。ひょっとする一位も実物は見た目も素晴らしいのだが、写真の撮り方がイマイチなせいでありきたりに見えているのかもしれない。
それはともかく、そんな風に考えるようになったのは、京都下鴨の宝泉堂のまつばぼうろ「千代木」をおみやげに頂いてからだ。
これは非常に美しい作りのパッケージだった。まずは包装紙の包み方が美しい。サイドのシールの貼り方も丁寧で雑な感じがまったくない。その上、その下にある缶は和風に程よくデザインされており、全体にツルとしたものではなく、持ったときの感触までこだわっている。さらに缶を開けてみると商品説明のリーフレットの下には緩衝材に包まれシールで止められた商品があり、驚いたことに緩衝材にはよく見かけるような遊びが全くなく、ピッタリのサイズで缶に収められているのだ。さらにさらに緩衝材の下にある、まつばぼうろは、半透明の袋に入り指一本入る隙間もなくピッタリと収められている。袋の内部のまつばぼうろは2個づつしっかり帯封されていて、ぼうろを引いてもピクリとも動かない。何という精緻な作りだろう。これを頂いたときは本当にうれしかった。これぞ本物の土産物だと唸った。「千代木」を作った人の心、それを選んだ送り主の心がひしひしと伝わった気がした。
そして、かつてこの「千代木」と同じような感覚を抱いたことを思い出した。Appleの製品を購入した時だ。たとえばiPhoneのパッケージは「千代木」のように精緻で、立体断裁された透明ビニールに包まれたiPhoneを取り上げると、何か特別なものを手にした感触すらある。またケーブルの形状ひとつにも気を使い、美しくパッケージ内に収められている。当時は画面を綺麗にするクロスまで入っていて、製品に愛着を持って欲しいという作り手の気持ちが十分に伝わってきたものだった。
翻って日本メーカーのパソコンやスマートフォンはどうだろう?環境に配慮しているのせいなのか、プロダクトデザイナーが悲しく思うくらい、安っぽいダンボールやいい加減なビニールに詰め込まれ、不必要なくらい分厚く不恰好で役に立たないマニュアルとともに出荷されている。これで何がものづくり大国なのか聞いて呆れる。しかも経営層自身が日本人にオリジナリティはないと考えている。こうしたメーカーの製品が後発の海外メーカーに市場を奪われ、売れなくなっている現状はむしろ当然の帰結といえよう。後発メーカーのモノマネは止めて、もう一度オリジナリティ溢れる日本の伝統に立ち返って自分自身を見つめなおして欲しいところだ。