オリエント、シチズン、セイコーの3社による新製品発表会「2008 JAPN WATCH COLLECTION」に続き、カシオの「2008年 Spring/Summer CASIO 時計新製品発表会」が開催された。バーゼルで行われる時計、宝飾品の見本市「BASELWORLD 2008」を前に、各社の新製品に見る2008年春夏の商戦の動向、トレンドを探ってみた。
新機能は中国の標準電波への対応
2008年春夏の製品において、機能面でもっとも目をひいたのは中国の標準電波を受信する電波時計だ。昨年完成した電波塔は、北京や上海など人口の多い沿岸部をほぼカバーし、台湾、韓国全域、九州全域にまで達する強力なもの。中国の電波塔を含め6局すべてに対応すれば、世界の人口(65億人)におけるカバー率は一気に10%台後半から34%へ拡大するという。
もっとも6局すべてに対応するのは技術的なハードルがある。というのも電波の周波数はそれぞれ違っており、時計内部にそれぞれの電波を受信する異なる水晶を取り付けなければいけないからだ。そして小さなスペースにいくつも水晶を取り付けると、ノイズなどの問題をクリアしなければならない。各メーカーがこうした技術的課題とどう取り組んでいるのか、また電波時計のほかにプラスαの機能としてどんなものを盛り込んでいるのかにも注目してみたい。
さらに以前の電波時計は大きく無骨になりがちで、デザイン上の制約が大きかったが、現在はかなり薄くなりスタイリッシュにもできるようになっている。電波時計はデザイン面でも面白くなってくると予想されている。
2008年はどういった技術で取組むのか担当者にうかがったところ、カシオが「6局対応、マルチバンド6をワールドワイドに推進していきます」
と電波ソーラー時計推進を宣言。シチズンも「ワールドワイドで見ると電波時計のシェアはまだ大きくありません。電波時計の世界戦略として今年は中国を足がかりにアジア中心に伸ばして行こうと思っています。」と語った。
それに対し、セイコーは「セイコーらしさ、セイコーにしかない技術、セイコーだからできることに取組んでいきます。いま電波時計が主流のように思われていますが、お客様の嗜好は多様になっていますので、電波時計だけではなく、機械式やクオーツ。それからデザインもスタンダードなものからファッショナブルなものまで幅広く揃えて嗜好の多様化に応えていきます」と、培ってきた技術を背景に総合力で挑む姿勢を示した。
各社10万円を超える高額モデルに厚み
これから登場する予定の新製品の中には10万円以上の高額なものも多く、いままで舶来時計に押され気味だった国産時計の巻き返しが期待できそうだ。
たとえばセイコーでは、セイコー ブライツ フェニックスのように、メカニカルクロノグラフ、キネティック ダイレクト ドライブ(自動巻発電クオーツ)といったセイコーらしいこだわりの商品をラインがある。またグランドセイコーには、通常の電池式クオーツと機械式、クオーツと機械式のいいところを組み合わせたハイブリットのスプリングドライブの3つのエンジンがあるが、クオーツであっても金属部品すべてを手で組み上げているという。見やすさにこだわって通常のクオーツでは回せないしっかりした針がつけ、そのため太い針を回せる特別なモーターを開発している。こうした国産時計のよさ、舶来時計に負けないこだわり、技術力をアピールした時計が続々登場すると思われる。
またシチズンではエクシード30周年記念モデルに代表されるようなプレミアム感を持った高級時計で、エコ・ドライブ電波時計でありながら質感を重視した心地よさを追求していくものと見られている。たとえばカリディア(http://karidea.jp/)という日本の美意識を前面にした上質で繊細な時計は60〜80万円以上するが、こうした価格帯の商品も増えてくるだろう。同じくカシオも限定発売した25周年記念モデル「MRG-8000G」を筆頭に、カシオらしさを追求しつつ高級時計のラインナップを拡充していくと考えられる。
一方オリエント時計の高級モデルはあくまで機械式のムーブメントにこだわったラインがメインとなりそうだ。
「人が持っていないもの、自分しか知らなものに価値を見いだすお客様が多いので、ムーブメントの最高峰、手作りで機械式のロイヤルオリエントをはじめ、すべての製品でオリエント時計らしさを追求しています。ウチのお客様は海外ブランドではなく、日本の時計が好きな方が買われています」と担当者は胸をはる。
女性向けキャラクター設定に違い
各メーカーともイメージキャラクタを使って女性にアプローチする戦略に出ている。2008年、カシオは昨年に引き続き土屋アンナ、セイコーは菅野美穂、シチズンは篠原涼子となっている。
シチズン、セイコーの商品がが学校や仕事などオンタイムを意識したラインが中心であるのに対して、カシオはバケーション、リゾートといったオフタイムの利用を想定したラインナップが充実している。このあたりのキャラクタの設定はラインナップの違いを如実に表しているといえるだろう。以下各社の広報担当のコメントをまとめてみた。
「セイコーというと男性的なイメージがあるブランドで、買われている方の7割程度が男性です。女性に認められるブランドにしてきたいと思っています。また普段に使う時計から宝飾を使ったジュエリーウォッチまで幅広くやっていきたいです。」(セイコーウォッチ広報)
「女性にもエコドライブ、電波時計を浸透させたいと思っています。いまのエコドライブのソーラー板はかなり装飾的にいろいろなバリエーションができ、また電波時計も大きさ、厚み、カタチがかなり自由にデザインできるようになりました。そのあたりを見ていただきたいですね。」(シチズン広報)
「2008年、女性ものに関してはデザイン性をさらに上げています。流行色などを取り入れながら20代の女性に向けて発信していこうと考えています。」(オリエント時計広報)
「他のメーカーとは利用シーンが異なる」というカシオは、夏のリゾートシーンなどでの使用にピッタリなビビッドなカラーのBaby-Gを発表している。
「2007年冬は土屋アンナさんのG-msラインが好調でした。今年の夏は海外旅行向けとして5局対応の電波モデルを出しました。それよ今年Baby-Gとして打ち出しているのがイエローです。全体に色がついているので、アクセサリー感覚でつけられるますし、アクセサリーといっしょにつけられます。大きめのバングルタイプと細めのブレスレットタイプを用意しています。」(カシオ広報)
女性向けのラインは男性向けよりもさらに多様。今年の春夏ファッションにピッタリな時計として、どのメーカーのどのモデルを選ぶのか、頭を悩ませそうだ。